資金ゼロでメガソーラーを取得

2013年03月14日 07:55

岡山県津山市に本社をおくガット(社長:美甘(みかも)信吉氏)が、手元資金ゼロでメガソーラー事業を開始した。太陽光革命はファイナンスの分野にも波及している。

ガットの本業は建物の総合管理。太陽光発電の分野では1年半ほど前に参入した新進の企業である。私が2011年末に現地で講演したのがきっかけでアドバイスするようになった。普段は他のオーナーのためにメガソーラー建設を請け負っているのだが、今回は自らもメガソーラーを所有し事業を行うことになったのである。

ファイナンス革命

ガットは、他の新規参入企業と同様、太陽光発電におけるビジネス改革を進めているが、単なるパネルや機器の調達に留まらず、ファイナンスの面でも画期的な方法を実現した。それが、今回のリース活用による「資金ゼロ」でのメガソーラー事業開始である。

場所は、岡山県加賀群吉備中央町。町の所有する土地3.5haを購入し、1MWのメガソーラーを建設することになった。年間推定発電量は111万kWh。しかし、資金なしでメガソーラーの運営業者になる。そんなことができるのだろうか。

資金調達の方法について、自己資金がない場合には、金融機関からローンを借りるという方法がある。その意味では「資金なし」は可能である。しかし、ガットはローンではなく、リースという方法を活用した。

ローンを組んで資金を借りるのとリースではどう違うのか。事業運営会社にとって、どちらも、ゼロあるいは小額の自己資金で、事業を開始できるという点では同じである。

しかし、ローンの場合には、物件(メガソーラー施設)は運営事業者(この場合はガット)の所有になり、バランスシートに借入金が載ることになり、企業としての自己資本比率が下がってしまう。これが、小規模な事業者の場合にはマイナスになるのだ。その点、リースの場合には、基本的に施設はリース会社の所有となり、借入金も事業者のバランスシートに載ることはない。

実際のリースにおいては、権利関係など少し複雑なところもあるが、その基本的な仕組みは以下のように非常に簡単だ。今回の例では、事業者がガット、リース会社はリコーリース、電力会社は中国電力である。
•事業者はリース会社と契約し、メガソーラーを建設する。太陽光発電の資産はリース会社の帳簿に載る。今回の案件では、リース期間は15年。
•メガソーラーでの発電による売電収入は、電力会社から施設の所有者であるリース会社に入り、リース料を差し引いた後事業者に支払われる。

今回の案件で特筆すべきは、15年というリース期間の長さだ。リコーリース以外にもリースによる太陽光発電を手がけるリース会社はあるが、これだけの長期にわたる契約例はあまりない。

今回の例では、ガットは吉備中央町から土地を購入しているが、土地も賃借し、文字通り、「土地なし、資金なし」での事業運営も可能である。

以前も指摘したように、太陽光発電は新しい産業であり、そこでは新しいビジネスモデルが起こっている。それは、商流に留まらず、ファイナンスにも及んでおり、今後、他の形態の新しいビジネスモデルも出てくると期待される。

 

 

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