25年度の固定価格買取制度の委員長案発表 太陽光発電は37.8円、その他は据え置き

2013年03月14日 07:53

再生可能エネルギーの固定価格買取制度における2013年度の電力買い取り価格について検討してきた経済産業省の調達価格等算定委員会は、11日、太陽光発電による買い取り価格を引き下げる案をとりまとめた。

太陽光発電は、住宅用の10kW未満を38円/kWh、事業者用の10kW以上を37.8円/kWhに引き下げる方針だ。買い取り期間は変わらない。太陽光以外の風力や地熱発電などについては2012年度の買い取り価格・期間をそのまま据え置く。

本買い取り価格案をもとに、意見の公募を行い、3月中に茂木敏充経産相が正式に決定する。

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太陽光発電

2012年度の太陽光発電の買い取り価格・期間は、住宅用の10kW未満が42円/kWh・10年、事業者用の10kW以上の太陽光は42円/kWh(税抜40円/kWh)・20年。

太陽光発電の住宅用10kW未満については、2012年度の調達価格の算定の基準としたシステム費用は46.6万円/kWだったが、現時点の最新データでは、市場の創造等に伴い、42.7万円/kWにまで下落していることが確認された。
 

住宅用太陽光発電のシステム費用の推移

住宅用太陽光発電補助金制度について調査したところ、2013年度の補助額は2万円/kW(2012年度は3.5万円/kW)、地方の補助金額の平均値は3.4万円/kW(2012年度は3.8万円/kW)だった。運転維持費やIRRについては、2012年度の前提を据え置いた。この結果、買い取り価格案は38円/kWhとなった。

事業者用10kW以上については、2012年度の調達価格の算定の基準としたシステム費用は、当時の1,000kW以上の設備の平均費用である32.5万円/kWを算定の基準とした。

しかし、現時点の最新データでは、市場の創造等に伴い、28万円/kWにまで下落している。運転維持費や運転維持費については、2012年度の前提を据え置いた。この結果、買い取り価格案は37.8円/kW h(税抜36円/kWh)となった。
 

非住宅用太陽光発電のシステム費用の推移

委員からは、10kW以上500kW未満の事業者用太陽光発電については、システム費用が「1,000kW以上」の場合よりも高くなっていることから、別途買い取り価格の区分を設けるべきではないかとの意見もあった。

これに対して議論を行ったが、現行の調達区分設定の下でも、10kW以上500kW未満の設備に、多くの申請件数があることから、区分が別になっていないことが致命的な参入障壁になっていないこと等の判断から、別の調達区分を設定する必要はないとの判断に至った。

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太陽光発電以外の風力、地熱、中小水力、バイオマスについては、新規運転開始実績が少なく、買い取り価格算定の前提となっているコストを見直す根拠に乏しいため、2013年度は2012度の買い取り価格を据え置くこととした。

風力発電

風力発電については、本制度の適用を受けた新規運転開始実績は、20kW以上が2件、20kW未満がゼロ件であった。

洋上風力発電については、「洋上風力に係るコストデータが把握可能となった時点で、(陸上風力とは)別途の区分を設けることも含めて、再検討を行う」こととされているが、現時点では、国が実証事業を引き続き実施している段階にあり、民間事業者が実施した場合のコストデータを把握できる状態に至っていない。

このため、現時点においては陸上風力と別途の区分を設けることとはせず、国による実証事業を通じて、引き続きコストデータの把握に努めることとした。

地熱発電

地熱発電については、本制度の適用を受けた新規運転開始実績は、大規模地熱発電、小規模地熱発電(バイナリー発電)ともにゼロ件であった。本制度の施行を受け、地熱発電の開発機運は高まっているが、大規模の地熱発電は開発に10年程度を要するため、現時点では運転開始に至っている案件は出てきていない。

一方、現在開発が進行中の案件が、地表調査・掘削調査実施中(8件)、探査段階(1件)、環境アセスメント実施中(1件)の計10件あり、開発前の地元理解に取り組んでいる案件が非公表のものも含め複数存在している。実際に第一号案件が運転開始に至るのは、早くとも概ね7、8年後以降となる見通し。

小規模の地熱発電については、バイナリー発電技術を活用した温泉発電等の計画が数件進行している。

中・小水力発電

中小水力は、本制度の適用を受けた新規運転開始実績は、200kW未満の区分で6件、200kW以上1,000kW未満及び1,000kW以上の区分ではゼロ件であった。

中小水力発電の場合、事業化に向けた最も初期の段階として1~2年程度をかけて、河川流量等の把握のための調査や水利使用のための行政手続等を実施することが一般的であり、現時点ではこの段階にある案件が多い。

本制度の開始により、従来は採算性の観点から開発を見送っていた案件の見直しや、中小水力発電の開発に向けた地域での協議会の設立など、開発に向けた動きが活発化している。

さらに、老朽化した発電設備を改修して、事業の継続を見直す事業者が増加している。今後、2~3年程度経過すれば、現在初期段階にある案件が運転開始にまで至ることが見込まれる。

バイオマス発電

バイオマスについては、本制度の適用を受けた新規運転開始実績は、木質バイオマス(未利用木材、一般木材、リサイクル木材)が1件、廃棄物系バイオマスが3件、メタン発酵バイオガスが1件であった。

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固定買取価格制度は、太陽光、風力、水力、バイオマス、風力の5種類の再生可能エネルギーで発電した電気を、10~20年の一定期間、固定価格で電力会社が買い取る制度として、昨年7月に施行された。

本制度を追い風に、太陽電池セル・モジュールの2012年の国内総出荷は、前年比1.9倍の246万6,979kWと大幅に増加し、暦年として過去最高を記録。そのうち、産業・事業用向け等の非住宅用は前年比4.3倍に拡大した。

また、経済産業省が取りまとめた2012年10月末時点の再生可能エネルギー発電設備の導入状況では、9割以上を太陽光発電設備が占め、再生可能エネルギーの普及が太陽光発電に偏っていることが指摘されていた。

2013年度の買い取り価格の算定に当たっては、制度の適用を受け運転を開始した設備より収集されたデータを用い、(1)2012年度買い取り価格の算定に当たって基礎とした諸元の妥当性について改めて確認するとともに、(2)コストの下落が確認された場合には、これを買い取り価格に適切に反映する、との基本的な方針としている。

 

 

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