太陽光をそのまま照明に使用する「スカイライトチューブ」 [井之商]

2013年01月11日 10:52

 化石燃料の有限性や原子力発電の逆風に伴って、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーへの期待が一段と高まっている。そうした中、さんさんと降り注ぐ太陽の光を、そのまま照明に使うユニークな技術が脚光を浴び始めた。井之商の太陽光照明システム「スカイライトチューブ」がそれで、2004年の発売から累計販売は3500台に達する。全国的な販売促進に着手したほか、沖縄県南城市では市などと太陽光照明を普及させる協定も結んだ。井上昇社長は「各地に販路を広げたい」(井上社長)と意欲を燃やしている。

曇りや雨でも屋根から室内に必要な明かり

 スカイライトチューブは省エネや電気料金削減の効果から、販売を急速に伸ばしている。累計販売の内訳は住宅用が2700台、産業用が800台。電力会社の発電コスト上昇に伴い、電気料金の大幅な値上げが避けられない中で、近年は特に大手企業が工場や店舗で大量に採用している。住宅用も売れており、12年8月期には販売額が2億円弱と、前年同期比でほぼ倍増した。「2013年8月期には3億円を目指す」(井上社長)と、目標を一段と高めている。
 スカイライトチューブは屋根に設置したドーム型レンズで採り入れた太陽光をチューブに通し、室内の照明にする。レンズの屈折技術によって低角度の太陽光も集められる。チューブは柔軟に曲がり、建屋内の照明箇所まで光を導く。熱や有害な紫外線をさえぎり、高効率な採光で曇りや雨でも室内に必要な明かりをともす。
 光学部品は豪州の会社から調達するが、屋根に取り付ける部材をはじめ国内仕様の施工技術はすべて独自開発した。ノウハウを蓄え、顧客のニーズごとに適合させる最適設計や信頼が高い施工体制を築いて成功した。

全国の工務店500社と取扱店契約

 井上社長は「省エネだけでなく、自然な太陽光で生活や仕事ができる健康的なイメージも売り込みたい」と意気込む。住宅用では全国ですでに工務店500社と取扱店契約を結ぶ。将来は太陽光発電や蓄電技術と組み合わせ、「電気がまったく不要な照明システム」の開発も目指している。
 販売促進のため、販売事業者との全国的な協業体制づくりも始めた。2012年10月には、スカイライトチューブを一戸建て住宅用に販売する認定資格者制度「採光プランナー(SP)」を設けた。見積もりから設置工事まで手がけられる高度な販売事業者をSPに認定し、計画では2015年までに全国で100人に増やす。一貫して販売を任せられる優れた販売事業者を多く育て、住宅用の需要開拓に本腰を入れる。
 SP認定者はスカイライトチューブの最適な採光角度や機器配置の提案・見積もりから工事、メンテナンスまでトータルに手がける。建築の高度な知識・技術を備え、責任を持って一貫販売できる取り扱い事業者と位置づける。同製品を取り扱う全国の販売店500社などをSPの候補とし、すでに3件程度の販売実績がある事業者から選ぶ。
 井之商は、滋賀県草津市の開発センターをSPの育成拠点とし、研修会を開いている。研修会では営業の仕方から製品説明、技術の講習などを綿密に実施する。販売のマニュアル化を進め、受注の成功・失敗例などのデータベースも作成する。またSPには携帯情報端末を与え、こうした営業情報を共有させる。井上社長は「住宅用も潜在需要は大きい」と予測する。高度な技能を備えたSPによる一貫サービス・責任体制を早急に整え、本格的に拡販する考えだ。

沖縄の地から、クリーンな自然光照明を

 2012年10月29日。井上社長は沖縄の南城市役所で古謝景春市長、地元電気工事業者の沖電工の嘉手納伸社長とともに「エネルギー地産地消推進パートナーシップ協定」の締結式に臨んだ。スカイライトチューブを市内の公共施設や一般家庭、企業に普及させ、災害停電時の対策や二酸化炭素の排出削減を図るとともに、スカイライトチューブを取り扱う市内事業者の育成・雇用拡大につなげるのが狙いだ。市は家庭や事業所が導入する場合の設置費用50%を補助し、沖電工が据え付け工事を手がける。
 自治体が特定の民間事業者の省エネ製品導入を促す異例の協業となる。井上社長は「沖縄がしばしば襲われる台風で数日停電した場合の照明にも役立つと認められた」と、地域的な特性と合致した背景を説明する。全国で唯一、原発が立地しない沖縄の地から、電気がまったく不要でクリーンな自然光照明の優位性をアピールする考えだ。
 

 

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